中国経済の自由化はなぜストップしているのか?

 国際経済の中で中国情勢は投資家や消費者の判断において重大な影響を引き起こす要因であり、中国の表面上の言動を鵜呑みにしてはしっぺ返しが返って来る。中国の国家制度は民主主義だが、その実態は中国共産党による独裁政治であり、民主主義を国家制度としながらも、国内は一国二制度により分断されている。


 中国企業は社会主義理念を支配理念とし中央政府の計画に基づき生産を担当する国営の単位である。中央政府の民間企業の国有化による経済統制は、戦時経済を背景とした中国人だけの排他的な一国経済を作り出し、中国の民間企業の成長力を鈍化させる悪要因で、自由主義経済圏からは高い参入障壁と見なされている。中国経済の自由化は、一国二制度を通じた中国共産党の統制による民間企業の国有化の結果、「国進民退」と三十年以上言われ続け、なかなか進展していない。


 フランスは23年のマクロン大統領訪中時に中国との関係においては米国追従を否定し台湾情勢にも中立を表明し、台湾を巡ってフランス社会との関係を重視していく一方で、同時にアメリカ資本の取り込みをも表明した。中国は一国二制度の中で自由主義経済に対する統制を貫徹させてきたが、今回のフランスやアメリカの訪中により、中国の民間企業には、資本主義社会の国際化に対応した活路が見いだされ、経済の自由化という点では将来に繋がる一定の成果に繋がったようである。


 中国企業が生き延びる道は、外資とのコネクションに基づいて、国際経営を拡大し、外国法人化を通じて、中国以外へ企業活動を国際経済に対応することに他ならないだろう。中国人の外貨への関心は高く、中国人は過去には人民元下落時に外貨口座の開設が急増していた。中国人にとって外貨を保有することは一国二制度のリスクをヘッジし、さらに経営の国際化に対応するという意味合いがある。

 中国では中国共産党による一国二制度の社会主義理念を至上視した統制経済が大原則であり、自由主義諸国とは同じ保守主義的な社会主義も取り入れている米民主党とも政治的には対立しているが、同国の自由主義経済との関わりでは、フランスやアメリカとの関係を取り込んだことにより、国内での拡大に限界があった中国企業の成長が海外で再開する余地が出てきているようである。中国経済の見方では、政治状況に惑わされず、社会的な動向に基づく実態を良く見て判断するべきである。(2023.6.21.筆者記)

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