アメリカの景気後退への不透明感が無くなったが、それに対する日本経済の反応は複雑である。 日銀の金融政策はこれまで緩和のためのマイナス金利だったが、マイナス金利に対する批判が広まり、金利上昇が始まった。しかし、それは短期的な刺激に対する陽動作戦だったのではないか。単純な金利に対するAIによる機械的な反応では、日米間でのリスクのない経済成長の軌道への中国等の新興国からの撹乱にまでは適応できていない可能性があるのである。
近年の国際経済の競争的な環境では、日本経済の競争力維持のためには更なる質向上が求められる。 日本経済がこれまでの国際経済における地位を維持するためには、新興国との経済体質の違いに基づき、新興国との競争に勝利しなければならないのである。
日米の貿易で、日本の輸出が増大し、持続的な経済成長を続けていたのは、円安によるものであり、 日本が独自に金融政策を定めたとしても、貿易輸出の増大に繋がらず、日本経済が経済成長力を失い、国際経済から脱落してしまう危険性が発生してしまうのである。 金融政策を立案する場合は、第一に日本の経済成長の大原則である貿易輸出の増大を基礎にして行わなければならず、その場合には、国際関係の維持改善や同盟国であるアメリカとの相関関係が重要になる。
アメリカと日本やドイツでは、経済の体質が異なっており、それぞれ独自の動きをしているため、金利を理論通りに操作するだけでは、日本経済は崩壊してしまうので、経済の実証的な検討結果に基づいていなければならない。 勿論、そのことにも増して、アメリカ経済の利上げによる景気維持に対して、従来からの日本経済の成長理論に軌道を戻す手もあるが、新たに日本の経済成長のための代替的な経済思想を作り出し検討することが、日本経済の質向上に繋がり、将来の日本経済の安定に繋がるだろう。
その新たな経済思想で特に重要であるのは、覇権国家の経済の中心が銀行業だったことである。例えば、ヨーロッパからアフリカに至る1200年続いたローマ帝国では、軍隊と金融業には密接な関係があり、軍隊の規模拡大が、金融の発達と一致していたのである。世界の歴代覇権国家は需要しかない消費国であり、その根拠は金利上昇により収益を得る銀行業なのである。日本で同様の事態が成立するのは、現在は無くなったが、第二次世界大戦で勝利し、大日本帝国の大東亜共栄圏が現在も成立していた場合に他ならない。したがって、銀行中心の経済は帝国主義的経済であることになるが、アメリカ経済は金融に関する法整備が進んだことにより、銀行業への投資業の兼業化が進んだが、それはつい最近のことであり、世界経済の重要な動向が示され続けている分野でもある。
対して、現在の日本国は、サプライサイド側に移行し、銀行の低金利化が進んだことにより株式取引が発達した経済になり、リーマンショック後はボルカールールにより銀行業と証券業が分離したことにより、アメリカにおいて、日本やドイツのようなサプライサイド国の銀行業の発達は更に制限されることになった。日本の金利政策では、低金利政策が採られていたが、企業の安全性重視の負債圧縮動向により、全体として負債比率は低位であり、社債金利も、2019年頃までは従来通り一定の金利であり、借入に対しても相対的に高い金利だったことにより、銀行から借入を行うよりも、株価のみが上昇していたのだから、実際には、その反対解釈により負債比率が上昇したのではないことが示されていたのであり、低金利政策の金融緩和は銀行からは評判が悪く貸し渋りが発生しており、日本経済は流動性の罠に陥っていたため、社債金利と国債金利のギャップにより投機的に現金が株式に循環し易くなったため、株式により資金調達する方が選好されていたのである。
2020年の新型感染症による存立危機事態発生まで借入は増大せず、アベノミクス時代には株価が上昇し易かったのはそもそも円安によるものだったのである。現在の日本やドイツは世界的にも多数の超富裕層が存在することが示す通り、株式投資家にとっては優利な投資環境の国であり、経済学としては、銀行より株式投資家には優利である特殊な金融理論を作り出すことになった。日本人の金融理論は投資家贔屓であり、その起源はアメリカのグラス・スティーガル法、日本の高度成長やバブル景気、最近ではボルカールールやマイナス金利にある。実は日本人の特殊な金融理論が、金利上昇を抑制してきているとも言えるのであり、経済の実態に合わせてバイアスとなった考えを一部修正しながら、金融政策を立案するべきである。過剰な円安への誘導をしても為替操作国対象になってしまうだけであり貿易摩擦を引き起こしてしまう上に、低金利政策には国際競走に勝利できるようなイノベーションが必要とされるという技術的特異点のリスクが伴う。
従来からの日本の金融政策は、国際経済におけるサプライサイドの特殊な金融理論としては、ケーススタディーのための事例に好都合な世界最高水準の黄金律のような経済思想だったのであり、また、日本と中国は経済体質は異なるので日本と中国は同じサプライヤーだとしても条件は全く異なっている。従来からの日本独自の経済理論を維持しなければ、日本経済の品質はどんどん退行し、二度と元に戻せなくなってしまうことなってしまうのであり、安易に教科書的な理論を優先させずに、物価スライドの実態、産業の変化に合わせて金利を操作するのが良いのである。 (2023.9.5.筆者記。)