日銀は、被用者の行動心理を仮定して、群衆心理を方向づけることを当面の間必要としている。
日銀の賃上げ期待を操作することを含む心理操作により、政府の統制は、前回のマイナス金利における政府系の大手銀行だけでなく、日本国民の社会心理にまでに波及し、政治家によるパフォーマンス的発言も飛び出している。
社会心理の誘導は、一種の無知を仮定しなければ成り立たず、以前述べたように、その鎮静のためには、真実を知ることが重要である。社会心理による操作は、政策ターゲットが主体的に行動するというのではなく、磁石に惹きつけられたように動いてしまうという現象を発生させるだけで、ターゲットは自分たちの思い通りになる理論的他者であるに過ぎない。
保守政党である自民党だが、自ら労働争議を主導するということは、金利上昇により利益を得ている先進国や銀行業にとっては、理論的リスクに他ならないだろう。吉田茂元総理は東南アジアのように日本が農業国家化することをこそ懸念していたが、日本社会は原始的な農業経済へ退行してしまっているのと同じ傾向性がある。
日本の政治には、侍のように、勘定という快と不快を制御するための会計的認知が全くなく、望ましい事態を思考できないことが、農業国家化への退行の原因になっており、明治維新で侍が荻生徂徠の学説を重視し帰農した結果、侍という階級が実質的には滅亡した事態と似ている。
日銀の金融政策では、政治の加熱し炎上した社会心理を仮定しているが、他方では、その社会心理の冷却化も少しずつ始まっていくのではないか?社会心理を加熱させるために労働争議を利用するという手法は、実際にも亡国の音声であり、日本政府は国家にとって不可避的な運命を生きている。(2023.8.31.筆者記。)