世界各国では連日のようにAI規制について議論されている。特にAIの利用が著作権や差別や武器開発に悪用されないか、反対にAIはどのような目的なら利用が認められるかが主な関心である。ヨーロッパでのAI規制法案に議論が集中しているがアメリカでは規制機関を設立して自主規制を行うことになっているという。
日本でも同様の議論が以前発生していた。2022年度の特許法改正を巡って特許開発による技術が武器開発に転用できる場合どうするかという議論である。日本の法改正では機微技術についても保全期間が満了すると特許申請が認められることになった。AI規制では日本のIT特許の規制がどのように変化するかが問題だが、IT 特許では設定したビジネスモデルとIT技術の内容の関連性が重要な指標となる。アメリカの業界を中心にした自主規制と異なり、日本やヨーロッパでは国家が規制の主体となり、法律の範囲内で専門家が国家との間での手続きを代理する。
日本の特許法では兵器開発に繋がるような技術を機微技術と呼んで他の技術とは区別している。日本以外の国では、秘密特許として公開を凍結できるだけで、国家等が指定された特許からの利益を排他的に独占することになる。また、秘密特許の範囲は予め決められている訳でもない。
国家が没収した機微特許への報酬の支払いも議論されたが、機微特許の開発は、本来から、存立危機事態と同じ人権の制限を受けることになるのが一国社会主義国家の立場における大原則なのであり、それに対する対価的報酬の支払いなどは、国家賠償請求権に基づかない自らの人権を蔑ろにした行為でさえあるため永久に請求権的意義を持ち得ず、それ自体としては、対価的報酬を目的としない公正無私な行為なのである。日本の機微特許に関する現行制度は、経済的自由権の制限が緩和され、自由権の制限は一時的凍結に限定されており、本来からの経済活動としての機微特許の開発が再び自由化されたものなのである。しかし、そのような事態を諜報機関やそのための技術の発達により十全に補足しようとすることが国防の基本的発想なのだから、自由を制限する武器密造者の矛盾した特許権論争は、ゴジラやハルマゲドンのような原爆を超える大量破壊兵器が官需をクラウディングアウトしいつまでも日の目を見ることもないのである。
日本やヨーロッパでは国家による強大な権力に基づく規制が行われ、アメリカのように業界での不正競争を防止するための自主規制が行われないのならば、ドイツ(ナチス)や中国のような国家主義と社会主義が結合した規制思想が現在も主流であったのである。ビジネスの世界では規制が厳しければ競争も激しいことになるので、特許開発の世界では、業界団体による自主規制よりも厳しい規制、国家を挙げての規制という激しい国家間の競争の名残が残されているのである。
日本では規制緩和の議論も行われたことがあるが、規制緩和は高度な技術の流出と特許の悪用を止めることができず経済のリスクも逆に増大させ、その結果、失われた三十年やドイツ病と呼ばれた不況を発生させていた。
日本の規制緩和は日本の自由主義経済を国家間の競争から隔離して保護し企業の成長の拡大の理論的基礎にはなったのだが、自由主義経済に一度放出されたものを国家が再度規制するのでは手遅れである。これまでは、アメリカとそれ以外の国では規制を行うための根本的思想が異なっているのであるが、規制緩和の議論の延長で、規制の是非を巡って、今後は日本では、ヨーロッパと異なり、アメリカ型の業界団体による自主規制が行われ易く必要ともされている。(2023.7.4.筆者記。)